紫外線を遮断するという特性を持つ成分であることから、日焼け止め製品やボディパウダー、クリームなどの成分として化粧品に配合されています。着色効果が注目されることもあり、一部のスキンケア化粧品として使われるなど、万能な成分として評価できます。

酸化亜鉛には、すでにお伝えしている紫外線遮断効果や抗炎症作用以外にも、いくつかの効果・効能が認められています。ここからは、それぞれの項目についてより詳しく解説します。

紫外線はUVA～UVCまでの3段階に分かれていて、それぞれ波長の長さが異なります。酸化亜鉛が効果をもたらすのはとくに波長が長いUVAとUVBです。とくにUVAに関しては強い作用を見せ、紫外線を散乱させると同時に、吸収して肌へのダメージを防げます。
UVAは紫外線の中でもとくに角層透過率が高く、無防備に浴びてしまうと肌の奥にダメージが及びます。皮膚色が黒く変化したり、紅斑が発生したりといった問題が発生する場合がありますが、この問題を軽減させるうえで酸化亜鉛はとても役立ちます。

人間が肌荒れを起こしたとき、その角層の表面には「ウロキナーゼ」という物質が存在します。これが活性化することで肌荒れを助長する結果となり、炎症を引き起こすことにつながりますが、酸化亜鉛にはこのウロキナーゼの活性を抑える効果が備わっていることがわかっています。
国内大手メーカーの研究によると、ウロキナーゼを抑制する作用を持つ成分を3週間にわたって継続使用した被験者のうち、7割に肌荒れ改善効果が認められています。酸化亜鉛は抗炎症薬として使われることもあるため、化粧品成分としても十分な働きを見せることに期待できる成分です。

酸化亜鉛はまずまずの屈折率を持つことから、可視光を肌の表面で反射させる作用を備えています。顔に塗布した場合は、配合成分をより白く見せる相乗効果を持たせられることから、メイクアップ化粧品における白色顔料の着色成分として用いられることがあります。

酸化亜鉛から期待できる効果としては、収れん作用についても挙げられます。酸化亜鉛をパウダー状にすると水分や油分を吸収する作用を持ち、使用感もサラッとしていることから、ボディパウダーや制汗剤の成分として酸化亜鉛が使われることもあります。

酸化亜鉛は医療用にも使われており、医薬上の有効性と安全性が確認された成分が収載される日本漢方局にも掲載されています。また、医薬部外品原料規格2006にも収載されているため、医療機関から見ても安全性の高い物質と考えられており、安心して使用できます。
皮膚刺激性やアレルギー性に関しては、ヒト試験が行われていますが、危険性を示すデータは見受けられませんでした。軽い刺激を受けることはありますが、重症化することはなく、これまでに10年以上にわたって人体に使用されてきた歴史を鑑みても、安全と評価できます。
唯一、眼刺激性に関しては動物試験によって軽度の刺激が認められることがわかっています。ただしこの刺激も軽度であり、なおかつ一時的であったことから、人間が使用するうえで過度な心配をする必要はまったくありません。
酸化亜鉛が赤ちゃん用の化粧品成分として使われることはあまり多くありませんが、赤ちゃんの肌に触れたとしても危険性のある成分の存在は認められず、安全です。眼刺激性のみ注意して取り扱えば、肌トラブル等を引き起こすリスクは少なく、安心して使用できる成分と結論付けられます。

酸化亜鉛に日焼け止めとしての機能があることは間違いありませんが、有効性が確認されているのは、波長が長いUVAとUVBに対するものです。波長が短いUVCへの効果はあまり強いとは言えないため、日焼け止めを購入する際は、そのほかの紫外線防止成分も含まれた商品を選ぶとより安全です。