幼児教育の現場で注目されている教育法リトミックとは
国立音楽院 宮城キャンパス
「人見知りしや場所見知りをしなくなった。」「引っ込み思案なこが積極的になる」、「運動能力が鍛えられるようになる」、「集中力と理解力が上がる」などなど、今、親子で楽しめるリトミックが大変注目をされています。音楽は子どもの成長に良い影響を与えるとよく耳にしますよね。実際に、多くの科学者が「音楽を聴いたり演奏したりすることは、知性に大きく影響する」と提唱しています。とくにリトミックは、幼児教育の現場で取り入れられ、注目されている教育法です。でも、実際にどのような効果や取り組み方法があるのか、意外に知らないことも多いですよね。そこで今回は、1985年に日本で初めて幼児リトミックを開講し、30年余りの実績を持っている国立音楽院さんの先生に、リトミックの効果や狙い・目的について、インタビューをしてきました。親子が一緒に楽しむ時間を共有するリトミックとは? 詳しくわかりやすく解説していきますのでぜひ参考にしてみてください。
国立音楽院 宮城キャンパス キャンパス長 宮内さん(右)
国立音楽院 宮城キャンパス 幼児・若返りリトミック講師、教務主任 佐野さん(左)
遊んでいるような感覚で、実は高度な訓練の教育になっているリトミック
Q:まず初めにリトミックとはどんなものなのですか?
リトミックとは、リズムや音楽を聴くことによる「音楽基礎教育」であると同時に、こどもたちが心と身体で音楽を感じ楽しむことで感性や想像力を伸ばす「情操教育」です。
情操教育とは
情操教育で、主に大切とされている
基本の4つの方針
1.科学的情操教育
自分の置かれている状況や事象を観察し判断する能力をつける
2.道徳的情操教育
善悪の判断をつけられる道徳心、
思いやる心、協調性を育てる
3.情緒的情操教育
命を大切にする情緒を育て人や
動物の命の重さを知る
4.美的情操教育
絵を見たり音楽を聴いたりしたときに
感動できる心を養う
リトミック情操教育の風景:
国立音楽院宮城キャンパス画像提供
Q:国立音楽院さんのリトミックの特徴を教えていただけますか?
1985年に日本で初めて幼児リトミックを開講し、30年余りの実績を持っています。講師は国立音楽院にて専門的な知識を学び、幼児リトミック教室での現場実習を修めた指導員です。
実績と自慢の講師たちだからこそ実現できるオリジナルプログラムは他の教室では体験できません。
完全オリジナルプログラムで、幼児リトミック教室での現場実習を修めた指導員がこどもたちに合わせた特色あるレッスンを行っております。幼児リトミックを開講してから30年以上続いて、今では全国に教室をもっています。
実際の授業ではフロア指導員とピアノアシスタントの2人1組によるレッスンは、ピアノ・キーボードによる生伴奏で行います。子供たちの動きに合わせて、即興的にピアノを弾くんですよ。CDでかけて行ったりする団体もあるみたいですが、国立(くにたち)は生ピアノにこだわり臨機応変な対応ができるようにしています。
生演奏ですと、先生の楽しい気持ち、嬉しい気持ちがそのまま伝わりますね。
そして、クラスによってや、同じクラスでもその日の体調の変化に気づければ、テンポの強弱をつけたりでき、その場の雰囲気に合わせて対応できるという事ですね、それは素晴らしいですね!まさに人の気持ちに寄り添っていますね?
Q:リトミックは何歳ぐらいからできるのですか?
生後6ヶ月頃からレッスンに参加することができます。
ママ・パパの膝の上、あるいは抱っこされながら、リズムやメロディーを一緒に体験します。タンバリンや木琴を一緒に叩く、クレヨンを持ってみる、一つ一つの体験から徐々にできることを増やしていきます。一緒に歌う、語りかけることでママ・パパとこどもたちとコミュニケーションを取っています。
お勧めの場所は、令和元年度に新たに整備した浅草保健相談センターと区内4カ所の子ども家庭支援センターです。
浅草保健相談センターは「母子健康包括支援センター」の機能を充実させて、妊娠期から子育て期までの切れ目のない支援を行う、子育て世代に優しい施設を目指して整備しました。
妊娠期から概ね3歳までご利用できる「おやこるーむ」も常設しておりますので、ぜひ遊びに来てください。
Q:年齢によってやはり内容も変わってくるのですか?
そうですね。2歳ぐらいからは先生の呼びかけにお返事したり、タンバリンをもって歩いたり、ママ・パパに見守られている安心感の中で、少しずつ自己を表現し、一人でできることが増えてきます。
身体の動きと音階を関連付けて身に付けたり、音符カードを使ってタンバリンでリム打ちをするなど、音楽的な要素もさらに加わってきます。音楽を通して自己表現を学んでいきます。
3歳になると自我が芽生えるこの年代で、ママ・パパから離れ、こどもたち自身が主体的にレッスンに参加するようになります。自分で名前や年齢が言えるようにするといった日常的な習慣を身に付けると同時に、音階トレーニングや、リズム打ちも少しずつ種類を増やし、タイム・スペース・エネルギーを意識した身体表現や、鍵盤に触れる機会を設けるなど、音楽教育として高度になっていきます。
リトミック教室の風景:
国立音楽院宮城キャンパス画像提供
Q:リトミックをやっているのと、いないのとでは違いはありますか?
全然違いますね。四分音符とか二分音符などありますよね?それらを小さい頃から四分音符だよとは教えないんですが、その音符の形を見ただけでリズムを刻めたりするんですよ。訓練をしているという認識はなくそれが自然に体に入っていく。遊んでいるような感覚で、実は高度な訓練の教育になっているのです。
身につけようと思って勉強・訓練しても中々身に付かないのに、遊んで楽しからこそ自然と吸収されているということですね。
音楽以外にも運動神経、身体能力、想像力、集中力が養われる
Q:リトミックを行うと運動神経が養われる、バランスが良くなる、とホームページで拝見したのですが、音楽と何か関係があるのでしょうか?
リトミックのレッスンは身体能力を高めるために訓練のようにやるのではなく、楽しいカリキュラムの一環として、取り入れています。そういうことで音楽能力や身体能力が結果的についてるんだと思います。片足でバランスをとったり、ジャンプをするなどのカリキュラムを1、2歳ぐらいのクラスから行っています。
なるほど、そういう事なのですね!楽しいから音楽に合わせて身体を動かしますし、カリキュラムにそれらを促すプログラムも入れることで身体能力が自然と養われるようになっているんですね。ますますリトミックの素敵さが分かりました!
Q:また、想像力がつくということですが、どういったものですか?
例えば、ここに丸いフープがあったとします。
「今日はバスに乗ってお出かけしましょう」と言えばフープがハンドルに変身しますし、「水たまりを踏まないようにジャンプして!」と言えばたちまち水たまりと化します。子どもたちの想像力は無限大です。そういう子どもたちの想像力を育むレッスンを行うことで、自然と想像力が養われて豊かになっていきます。
Q:想像力の他に集中力も上がるんですよね?
子供って楽しくないとすぐにどっか向いてしまったり、他の事に興味がいってしまったり。リトミックの中では常に子供達は何をしてあげたら楽しのか、子供たちの集中をこちらに集めるために、先生たちは常に考えながら動いています。先生の力量はかなり重要です。
「皆で絵本を見たり、音符の勉強をしたり」「これは四分音符だよ、手拍子しようか」だけでは全然楽しくない、ワクワクしないので集中してくれないんです。でもそこに音楽と歌を組み合わせることによって集中してくれるので、やはり音楽の使い方は重要なのかと思います。
また、一つのことに集中する時間を長く設けることで、他の面でも集中力に繋がっているのかもしれないですね。
またリトミックの音楽的要素として『即時反応』(音を聴いて瞬時に動きを変えること)というものがあります。
例えば、雨が降る音が聴こえたら身体で雨を表現する、カエルの音が聴こえたらカエルに変身する、などというように、音に瞬時に反応する訓練を毎回のレッスンに取り入れます。子どもたちは「次はどんな音が聞こえるんだろう?」とワクワクし、集中して音を聴くようになりますので、“聴く力”が身に付きます。
“聴く力”が付くことで、入園後も先生のお話を聞くことが容易に出来るようになりますね。
子供たちの状況を見て、臨機応変に対応し、楽しい事を続けれるようにしてあげる事で自然と集中力を伸ばしてあげるように考えてくださっているのですね、本当に素晴らしいですね。
そうなんです。なのでそこで生ピアノの弾き語りがまた大事になってくるんです。CDの場合ですとそういった取り組みは難しいですからね。
リトミックで期待できる
効果
1.音楽感覚が身につき
リズム感が良くなる
音楽に合わせて身体を動かすことで、
リズム、
音の強弱や高低といった
音楽的な感覚が身につく
2.運動能力が高まる
歩く、走る、ジャンプ、スキップ
といった運動面の発達
3.感覚が研ぎ澄まされる
集中力や記憶力、判断力、表現力が
自然に身につき、
創造する力も
育まれていく
Q:実際にリトミックを続けたことによって変わられたお子さんはたくさんいると思うのですが、例えば印象に残っているお子さんはいらっしゃいますか?
ちょっと攻撃的だった子が、性格が落ち着き優しくなりましたね。
リトミックのレッスンでは、お父さんお母さんと、またお友達と関わる内容をたくさん取り入れます。『人と関わる事、協力することは楽しいことなんだ』と実感したことで、思いやりの心を持ってくれたのかな?と思います。
不思議ですね。割と短期間というか毎日やっているわけではないですよね?
月に2回程度で、3年4年と通ってくれていています。だいたい、1年経ったぐらいから変化が見られます。
それはすごいですね。
また、親子のコミュニケーションが自然と取れるリトミックですが、ママも遊びながら育児に対しての成長をしてそうですよね。色々な気づきがあったりとか、しっかりと子供を見るようになるとか。
そうですね。今まではママにべったりだったのに、リトミックに通うようになってママから離れて活動出来るようになりました!と喜んでくださったお母様もいらっしゃいました。お家では中々気付けなかった一つひとつの小さな成長を、私たちもお母様と一緒に喜べたら嬉しいです。
私たちの思いとしては、リトミックは子供たちだけでなく、お母さんたちにも全力で楽しんで欲しいです。リトミックに参加することによって、少しでもリフレッシュになってくれればと思っております。
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