取材・相談してきました!

第11回は想像以上に“たのしい・おもしろい”
多くの口コミで「神」施設と言われる愛知県児童総合センターに行ってきました。

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愛知県児童総合センターのコンセプト

愛知児童総合センター「あそび」の5つの考え方

1.「?」のきっかけは身近なところに

身近にある「モノやコト」に気づく、視点を変えて「あれっ?」これいつも見てたけど、こんな特徴もあるんだなと気づいたりするきかっけを持てるようにしています。

2.残らないあそび

例えば、鬼ごっこという遊びは何も残らない、作る遊びだとしても、最終的には何も残らない、愛知児童総合センターでは作ったものは持って帰らない、持って帰れないとしています。作ったものはこの施設の中に飾ってあるんです。
理想の遊び方は砂場の遊びで、何か作って楽しんだら、最後は平らにして「あーおもしろかったね」という感じで終わるというのが良いんです。
何かを作って持って帰ろうとすると、結果(できあがり)を気にしてしまう事になってしまいます。
結果を気にしてしまうと、作っている途中の過程を楽しめなくなります。結果というものは何か作品をつくる事に関しては良いと思うのですが、遊びというものの中ではちょっと違うのではないかな?と思っています。

筆者:
また、作りたいという意欲もわきますし、その場だけしか作れないという集中力を育むことに繋がりそうですね。

3.ムダこそ大事

効率や効果を重要視していないので、例えば「この遊びをしたらこういう事ができるようになります」「これをするとこんな効果があります」と、いった事は一切考えていません。
そういう部分じゃないところで、親子で一緒に時間を過ごすことで、お互いの新しい面や特徴を気づけることの時間が持てる事の方が大切じゃないかなと思っています。

4.「不自由さ」がたのしい

自由にあそんで良いよというと、子どもたちはかえって何をして良いか分からなくなってしまう事がありますので、あえてルールを決めたりします。何か描いて遊ぶ場合に「筆は使いません、手でやりましょう」といったルールを設けることによって「手でやるならどうしたら良いかな?」と、子どもは工夫をするようになります。その工夫する部分が創造力につながったりしますので、わざとちょっとした枠を作っています。

5.大人が楽しいと子どもはうれしい

親子で来た時には「おとな自身が楽しんでくださいね」をコンセプトにしていて、子ども向けといったことを基準にはしないし、まして“子どもだまし”なことはやらないようにしています。
こういったこともあって愛知児童総合センターでは、キャラクターを使うことがありません。
本物の楽しさは大人も子どもも対等で、それは共通の体験となり、共感を育む事に繋がります。

筆者:
社会に出てみると決まった事ばかりじゃないことが起こるので、それを遊びの中で工夫したり、適応したりすることを学ぶ、それが大人の時期に関わってくるのですね!
実は遊びの中に凝縮されていたとはとても興味深いです。

阪野さん:
最近よく言われるのが「遊び」をする事で、非認知能力の方が育まれると言われていますよね。非認知能力とは基本的には数字化できない能力「コミュニケーション力など」で学校という場所は、認知能力を育む場所と言われています。

※非認知能力とは・・・
読み書き・計算などの数値では測れない能力を。
大きく分けて、自尊心・自己肯定感・自立心・自制心・自信などの「自分に関する力」。 そして、一般的には、社会性と呼ばれる、協調性・共感する力・思いやり・社交性・道徳性などの「人と関わる力」と定義されています。

筆者:
遊ぶこと・好きなことは無限で自由ですからね?創造力や順番など遊びは無限でやりたいようにする(好きなように)事が大切な気がしますね?
そういう風に考えると「遊びができる時期は、遊ばせることが大切」だと断言しても良いかもしれませんね?

阪野さん:
「遊びと勉強がよく対立するものと捉えがちですが、たぶん対立させるものではないですよね?」遊びという言葉にいろいろなイメージがありますので、あまり良くないイメージも多くて「遊んでばかりでダメでしょ?」などよく言いますよね 笑
だけど、子どもの時期の遊びは生きる事、生きる力を育むことなんですよね。

現代においてスポーツと言われているものや、アート(美術・音楽等)と言われているものも、最初は遊びから始まったんじゃないかな~?と思います。今では野球やサッカーというように、決まったルールの中でプレーされていますが、最初はモノを投げたり受けたり、蹴っ飛ばしたりといったシンプルな遊びで、それが細かいルールが作られる中でスポーツとして確立されていったんではないかと。
アートだって、土の地面に木の棒で描いたりして楽しんでたことが、素材や手法が変化しながら様々な分野のアートに広がっているんじゃないかと思っています。

筆者:
たしかに私も想像してみると古代の壁画の記録にしても「より保存が利くようにしたり」「他の誰かが作ったものよりキレイにしよう」と知恵を絞り染料や金銀などが使われるようになったりしたのではないかな?と思いますね。想像力とアイディアで、そして個々の美的感覚(センス)が磨かかれて現代のアートにいたると思いますね。

たしかに、美術と言われるように「美」の「術」でノウハウがありますが、ノウハウの前に画家の独創的だったり、センスによって生み出された方が先で、それらが後になり、評価され、何がすごいのか分析された結果、ノウハウとして残り、後世に残って「美術」として受け継がれているのかなと思います。遊びって本当にすごいですね。
何より楽しい事が一番、自由に何をするのかとっても大事であり、それが個性になっていくのですね。

今思い返せば筆者が小学生の頃、帰り道に石ころ見つけて、自宅まで蹴り続ける遊びをしていた事を思い出しました。それがとても楽しかったんですよね?どぶに落ちないように、人の家や車にぶつけないようにとか、石のはじっこを蹴り抜けば曲がって飛ぶんだとか、今思えば色々と考えて、経験してたんだなと思いました。

阪野さん:
そうそれもまさに、自分でおもしろい!と思い、自分のルールを決めていますよね? 遊びというのは、基本的に自発的にやらないと遊びではないですからね。
自分が楽しい遊びを見つけていく事が大事です。

逆に我々(愛知県児童総合センター職員)の立場では、その楽しい遊びを見つける為に、どのような事が楽しめるかな?どのような事をすれば創造力が生まれるかな?などとして私たちから「この遊びやってみる?嫌じゃない?」と問いかけながら「やってみるー!」と言ったら参加してもらうようにしています。

“児童館あるある”なのですが、たまに遊びのプログラムやっているのに「これ終わったら遊んで良い?」と聞いている子がいます?これはその子にとっては、もう遊びではないんだと思います(笑) やらされているとそういう言葉がでてしまいます。自分達からやりたいと遊んでいると決してそのような言葉は出てこないですからね。
だけれども、それも一つの発見だと思います、大人が楽しいだろう、この子にとって良いだろうと思っていても、いろいろな理由があるかもしれませんが、その時の子どもに刺さるものではなかったんでしょうね。

筆者:
遊そのような微妙なニュアンスをくみ取りながら、遊びを仕掛ける上でプログラムの洗練さに繋がっているんですね?

阪野さん:
そのプログラムつくりも、夏休み、冬休み、春休みなど長期休みなどに、テーマを決めてプログラムを作っています。光や色、形をテーマにした遊びだったり、【なんだかうれしい(感情)】という気持ちを大事にする事だったり。
例えば、大人でも、この形がかわいい、この色がステキ、これすごくかっこいいなど、理由は言葉にできないけどとにかく「なんだかうれしい」につながる感情ってありますよね?
「なんだか良く分からないけど好き」という所から、そういう感情が色々なものを見る事・感じる事のきっかけになりますよね。
それって人それぞれで正解は無いですから、子どもたちの自分の「なんだかうれしい」を表現してほしいですね。

筆者:
この施設にきて私の「なんだか嬉しい」は、施設真ん中にある空中通路でした。笑

空中通路はコチラです。

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筆者:
この「なんだかうれしい」という視点と違うのかもしれませんが、自分が苦手だなと思ってたところが、他人から見たらそこ良い所だよと言われたりする所があったりしますし、「なんだかうれしい」と思ったことがあったら「メモしてみたら?」と言ってあげておけば、改めて知るきっかけになりそうですね? これは大人にとっても自分をしるきっかけになりそうですね?

阪野さん:
その人のおもしろいと思う事を知る事もおもしろい・楽しい・嬉しいですよね? この人はそういう視点で物事を見ているんだ、そういう見方いいなと良い刺激になりますよね?

筆者:
特に、子どもたちの視点は突拍子もなく、おもしろくて、楽しく、驚かされますよね?

阪野さん:
他のテーマとして「うそをついて遊ぶ」というテーマもあります。普段は「うそをついてはダメだよ」ですが、「今日はうそをついても良いよ」と言ってあげる。
ただし、「ほかの人を傷つけるようなうそだけはやめようね」というルールにして“ウソ日記”を書いて遊びます。
そうすると子どもたちは「“太陽がつ、月にち”、今日朝になったら虫になってた」や「虹を登って空にいる鳥さんとお話しして楽しかった」など、うそばっかりな日記をつくってくる、想像力をかきたてるプログラムの1つです。

今までのプログラムは子どもの健全育成の為のプログラムとすると、それとは別に、子育て支援を目的にしたプログラムとして、毎週水曜日に乳幼児と保護者30人くらいのプログラムや、子育て中のお父さんを対象にして「子どもとお父さんだけ」でお母さんは参加できませんというプログラムも月に一回開催しています。ボードゲーム・カードゲームをお父さんと子どもで楽しむといったものです。

筆者:
同じ遊びでもパパとママがやるだけでも違いますか?

阪野さん:
そうなんですよね、お父さんとお母さんだとかかわり方がちがうので、おもしろいですよ。遊びの展開が変わりますからね。

絵本作家さんのワークショップでは、どちらかというとお母さんの方が絵本作家さんに興味があって、どんな様子でワークショップが進んでいくのかを見たがる方が多いのですが、どうしても子どもやお父さんに「ああして、こうして」と言いたくなってしまうんですよね。
「今日は手出し口出しは一切無用ですよ~(笑)。子どもやお父さんの思うようにやらせてあげてください。」って声がけすることもあります。

その他、同じメンバーで週1回の5回連続で活動するクラブ活動もあります。 2才半~3才の子どもと保護者が一緒にやります。年一回のプログラムですが、遊んだあとに保護者同士のコミュニケーションの時間を設けています。
毎週テーマを決めて、自分たちの子どもに対するいろいろなお話しをしてもらいます。5回のうち1回だけお父さんに来てもらい子どもと一緒に料理を作ってもらい、お母さんはお母さんたちだけの時間を過ごしてもらうワークショップを行い、最後に一緒になってお父さんと子どもが作ったものをみんなで食べるというプログラムです。

筆者:
親御さんが楽しめる場をつくるなど、色々な視点で作られていますね。

阪野さん:
まさに大人が楽しむことが大切なんです。意外と子ども達はまわりを良くみていて、当日、あまり遊ぶことに参加しなかった子も家に帰ってから「あれしたね、これしたね」とか言われることも多いみたいです。

1つお伝えしておきたいことなのですが、乳幼児の遊びのプログラムって彼ら彼女らが申し込むわけではないんですよね、申し込むのは保護者なので、保護者はやらせたいかもしれませんが、子どもは別に「今やりたいわけではない」かもしれない。“遊び”はあくまで子どもが自主的にやる事が大切だと思っているので、やりたくない子には「その場で見てていいよ」「見ててやりたくなったら参加してね」と言っています。保護者の方にも無理にやらせないようにしましょうとしていますね。
自分の子どもの成長はどうしても気になるので、「よその子はできるけど、うちの子はできない」って思う方が多いのですが『個人差があるし、2才と3才というけど、4才に近い3才の子とでは約2年の差があってそれは大きな差になるので全然気にしないで、子どものペースによりそって遊べば良いんですよ』と言っています。

『このような場所(児童館)にきて親御さんを落ち込んでしまう事が一番残念な事なので、子育て支援をしているのに、落ち込ませてどうするんだ(笑)』ですからね。

保護者の方がまず楽しんで取り組んでくださいねとお伝えしています。

取材を終えて筆者が感じたことなのですが、職員の方々の考え方は常に、子どもと親御さんの事をとても繊細に気遣ってくれながら、子供の自発的要素をくすぐり育ませるプログラム、感性を磨き、親子の関係性、他の子たちのとの関係性など、これから大人になっていく為に必要な社会性まで考えて作られている事に感動しました。
本当に私自身がとても勉強になり、良い刺激を受けました、子どもが行きたい所だけじゃなく、むしろ大人も行くべきところと言えます。
子どものころの無邪気さに気づき、損得勘定抜きに考えたり、今の知識知恵を持って改めてどう生きていくか? 自分が本当に好きな事、自分が本当に価値を置いてるものが何かな?と気づけるかもしれないと思った今日この頃でした。
それでも様々な責任がありますしルールも沢山ありますが、逆に息抜きできる事も、楽しめる事を見つける能力も備わっているので、忙しい毎日を送っている方ほど、ご家族で遊びに行くのが良いと思います。本当にオススメの場所です!!

愛知県児童総合センター
〒480-1342
愛知県長久手市茨ケ廻間乙1533-1 愛・地球博記念公園内
愛知県児童総合センター(公益財団法人愛知公園協会)

開館時間:午前9:00〜午後5:00
休 館 日:毎週月曜日
(月曜日が祝日の場合は次の平日)および年末年始(12/29~1/1)
夏・冬・春休みなど臨時開館日もあります。
詳しくはカレンダーをご覧下さい。
https://www.acc-aichi.org/

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